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コラム

相続人が誰もいない「相続人不存在」の場合の相続

2017.11.20
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相続事案での問題といえば、多くの場合遺産分割で揉めるなど権利者同士の利権争いがメインに語られることが多いですね。

ただ相続というものを改めて考えてみると、亡くなる故人(被相続人)を取り巻く状況というのは人それぞれです。

中には遺産を承継してくれる相続人が誰もいないという事案もあります。そのようなケースを「相続人不存在(そうぞくにんふそんざい)」と呼びますが、今回はこのケースを解説していきます。

どのような時に相続人不存在となる?

相続人不存在となるのは文字通り相続人がいない場合ですが、これは「人」として相続人が生存していない場合だけではありません。

元々は相続できる人として生存していても、事情によって相続権を失ってしまうことがあります。このような場合も相続できる権利を持つ人がいなくなるので相続人不存在となります。

具体的には以下のような場合です。

①相続欠格(そうぞくけっかく)

故意に被相続人となる者を殺害したり、遺言書を偽造・変造するなどした場合は、その者は相続する権利がなくなります

②相続廃除(そうぞくはいじょ)

被相続人に対して生前に虐待を行ったり重大な侮辱を与えるなどの行為があった場合は、被相続人となる者は一定の手続きを経て、当該行為を行った者の相続権を失わせることができます。

③相続放棄(そうぞくほうき)

相続人に相続する権利があっても、遺産に占める借金の方が多い等の理由で、相続を放棄することができます。


上記のような場合で、遺産を承継する者がいなくなった場合も相続人不存在となります。

なお、相続人が行方不明という場合は相続人不存在とはならず、民法上の他の規定によって別途処理されることになります。

事故や災害などの原因により生死が不明となったり、遺体が発見できないため死亡を立証することが不能となったような場合は、被相続人が「死亡したものとみなす」、もしくは「死亡したこととする」ことで相続開始、とします。このような制度を「失踪宣告」や「認定死亡」といいます。

詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

失踪宣告と認定死亡~相続開始の例外規定について(1)

相続人不存在の場合、遺産はどうなる?

さて、相続人不存在の場合の遺産の大きな流れですが、次のようになります。

  1. 被相続人の債権者に遺産をもって清算する
  2. 被相続人と特別に深い関係があった者(特別縁故者)がいる場合はその者への財産分与がなされる
  3. 特別縁故者がいない場合、遺産は最終的に国のものになる

上記の処理を行うために、順を追ってさまざまな手続きが必要となります。

 

戸籍上、相続人が存在しない場合」や「相続欠格相続放棄相続廃除などにより遺産を相続できるものがいない場合」を相続人不存在、といいます。

この場合、相続人が存在している場合の相続とは異なる手続きが必要となります。みていきましょう。

相続人不存在の場合の手続き

相続人不存在の場合、遺産処理のための手続きは以下のような流れで進みます。

①相続財産管理人選任の申立て

利害関係者または検察官が、家庭裁判所に対して相続財産を管理する者の選任を申し立てます。

②相続財産管理人の公告

家庭裁判所は相続財産管理人が選任されたことを公告します。

これは相続が発生したことを世に知らしめ、これによって相続人が名乗り出るようにする効果もあります。この公告は2か月間行われます。

③債権者や受遺者に対する公告

上の公告でも相続人が現れない場合は債権者や受遺者に対して権利を申し出るように公告がなされます。この期間は2か月間以上とされています。

④相続人捜索の公告

まだ相続人が現れなければ、債権者等への清算手続きと並行して相続人に対して申し出るように公告がなされます。この公告は相続財産管理人が家庭裁判所に請求することによって行われます。

この期間は6か月以上の期間を定めて行います。この期間に相続人が現れなければ相続人の不存在が確定します。

⑤特別縁故者への財産分与の申立て

上記期間内に相続人が現れなかった場合、内縁の妻や被相続人の療養看護に努めた者などで特別縁故者にあたる者は、相続人捜索の公告の期間満了日翌日から3か月以内に財産分与の申立てができます

⑥審判と財産の引き渡し

家庭裁判所は特別縁故者への財産分与の可否と金額を決定し、当該財産を特別縁故者に引き渡します。

⑦国庫への帰属

残った財産は国が引き取ることになります。

スムーズな遺産承継のために遺言書を活用しよう

相続人がいないケースでは上述したような流れで財産の移転手続きが進行し、最終的には国のものになってしまいます。ですから将来被相続人となる人は、誰か財産を譲りたい人や団体がある場合は遺言書でその旨を指定しておくようにしましょう。

特別縁故者となる者、あるいはそれ以外の者に対しても遺言書を用いて「遺贈」することでスムーズに財産を譲ることができます。

例えば生活上の色々な世話をしてくれた長男のお嫁さん、長年連れ添った内縁の妻、困った時に力になってくれた友人や知人などは法律上は相続人となれないので、このような人に財産を譲りたい場合は遺言書でその旨を記載しておきます。

また個人でなく法人にも遺贈することができ、こちらは「遺贈寄付」などと呼ばれることもあります。

税法関係では基本的に、個人に対する遺贈では相続税法人に対する遺贈は相続税ではなく法人税の要領に従って処理される形になります。税の取扱いでは個別のケースで少しややこしいこともあるので、詳しくは税理士もしくはFPなどに確認するようにしてください。

まとめ

今回は遺産を承継する人がいない「相続人不存在」の場合について解説してきました。

この場合の遺産の運命としては、債権者への清算と特別縁故者への財産移転が行われ、それでも残った財産は最終的に国のものになってしまいます。

せっかく自分が築いた財産ですから、友人知人やお世話になった人がいるならば、その人たちへ遺産を渡すことができるように遺言書を活用するようにしましょう。

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