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コラム

相続対策を考えている方は必見。相続時精算課税制度とは?

2017.3.6
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相続対策を考えようと思って調べていくと、「相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)」という言葉をしばしば見かけます。相続時精算課税制度とは、どのようなものなのでしょうか。

相続時精算課税制度とは、「相続時」という名前はついていますが、贈与税の課税制度のひとつです。相続時精算課税制度の適用を受けることで、2,500万円までの贈与について贈与税がかかりません

相続時精算課税制度は、具体的にはどのような制度で、どのようなメリットとデメリットがあるのかを解説していきたいと思います。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税1

相続時精算課税制度とは、親から子への贈与をスムーズにして、子世代の消費を拡大し経済を活性化しようとする目的で、平成15年より創設された制度です。

一定の要件をみたす贈与について、2,500万円まで贈与税が非課税となる制度で、2,500万円を超えた部分については20%の贈与税率となっています。
相続が発生した時点で、相続財産の価額と、相続時精算課税制度を利用して贈与された財産の価額の合計額から相続税額を計算し、そこから支払った贈与税を差し引いた金額の税金を納付します。

イメージとしては、相続財産を相続の前に贈与でもらっておいて、税金の支払いは相続時まで保留しておく感じになります。

相続時精算課税制度を受けるための条件

相続時精算課税制度の適用を受けるには、いくつかの適用条件があります。どのような場合にこの制度の適用を受けることができるのか、詳しくみていきましょう。

(1)対象者

相続時精算課税制度の適用を受けるには、贈与を受ける受贈者と、贈与をする贈与者がそれぞれ、次の条件にあてはまっている必要があります。

①贈与を受ける受贈者

贈与を受ける人は、20歳以上の推定相続人である子か、20歳以上の孫である必要があります。平成26年までは、20歳以上の推定相続人である子のみでしたが、平成27年1月1日より対象者が拡大され、20歳以上の孫についても制度の適用を受けることができるようになりました。

②贈与をする贈与者

贈与をする人は、贈与をした年の1月1日の年齢が60歳以上の父母か、祖父母である必要があります。平成26年までは65歳以上の父母のみでしたが、平成27年1月1日より年齢が引き下げられ、父母のみでなく祖父母からの贈与も制度の適用を受けることができるようになりました。

(2)対象となる財産

相続時精算課税制度では、贈与財産はどのような財産でもよく、金額や贈与の回数に制限もありません。したがって、今年はマンションを、次の年以降は現金を贈与するという方法をとることもできます。

(3)手続きの流れと必要書類

相続時精算課税制度の適用を受けるには、2,500万円までの贈与で贈与税がかからなくても、申告手続きをする必要があるので注意が必要です。
贈与を受けて、相続時精算課税制度の適用を受けようと思ったら、まずは相続時精算課税制度の適用対象にあてはまっているかを確認します。適用対象にあてはまっていたら、次にあげる必要な書類をそろえて申告手続きを行うことになります。

①申告書類

相続時精算課税制度の適用を受けるには、贈与税の申告書のほかに「相続時精算課税選択届出書」が必要になります。

※「相続時精算課税選択届出書」は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます → こちら

②届出書の添付書類

相続時精算課税選択届出書には、適用条件を満たしているかを確認するための次の添付書類が必要です。

  • 贈与を受ける人の戸籍謄本(妙本)などの書類で、贈与を受ける人の氏名、生年月日、推定相続人である子か孫であることが証明できるもの
  • 贈与を受ける人の戸籍の附票の写しなど、贈与を受ける人が20歳に達した時以降の住所か居所を証明できるもの
  • 贈与をする人の住民票の写し、戸籍の附票の写しなど、贈与をする人の氏名、生年月日、贈与をする人が60歳に達した時以降の住所か居所を証明できるもの
  • 申告する人(贈与を受ける人)のマイナンバー

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ここまでは、「相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)」の概要と適用要件について解説しました。
続いては、相続税精算課税制度への理解をより深めるため、具体例を用いて、贈与税の計算方法を解説していきます。

それでは見ていきましょう。

相続時精算課税制度の贈与税の計算方法

相続時精算課税2

父と母から生前贈与を受けるAさんを例にして、贈与税の計算を具体的にみてみましょう。

Aさんは、相続時精算課税制度は、父からの贈与について選択することにしました。

(1)1年目

Aさんは、1年目は父から1,000万円、母からは400万円の贈与を受けました。
父からの贈与については、相続時精算課税制度の適用を受けるので、2,500万円までは贈与税がかからないので、今回は贈与税は0円となります。
母からの贈与については、通常の贈与税の計算になりますので、400万円から基礎控除額の110万円をひいた290万円を、贈与税の速算表にあてはめると、290万円×15%-10万円となり、贈与税は33万5,000円となります。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

※出典:国税庁ウェブサイト タックスアンサー「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

(2)2年目

Aさんは、2年目も父から1,000万円の贈与税を受けました。2,500万円の相続時精算課税制度の非課税枠は、1年目の贈与を差し引くと1,500万円残っていますので、2年目の贈与税は0円になります。

(3)3年目

Aさんは、3年目も父から1,000万円の贈与を受けました。2,500万円の相続時精算課税制度の非課税枠は、1年目と2年目の贈与をさしひくと、500万円しか残っていませんので、3年目は500万円は贈与税はかかりませんが、残りの500万円については20%の贈与税がかかり、100万円の贈与税となります。

(4)4年目以降

4年目以降も父から贈与を受ける場合には、もう相続時精算課税制度の非課税枠は使いきっていますので、一律で20%の贈与税がかかることになります。

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相続時精算課税制度の2,500万円という非課税枠のインパクトは、小さくはないことがわかったかと思います。

 

相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)について、制度の概要と適用要件具体的な計算方法について、ここまで解説をしてきました。

ここからは相続税精算課税制度メリットとデメリットについて説明をしていきます。相続対策を考えるにあたって、役にたつ内容かと思います。ぜひご覧ください。

相続時精算課税制度のメリットとデメリット

相続時精算課税3

相続税精算課税制度は必ずしも得といえるわけではなく、メリットとデメリットがありますので、メリットとデメリットを考慮して適用を受けるかどうかを検討することになります。

(1)メリット

①財産が値上がりしたときに有利になります。

相続税精算課税制度は、贈与時点の評価額を基準にして計算されます。相続が発生して贈与税を精算するときにも、この評価額は変わりません。相続時に評価額の値上がりが予想される財産については、評価額が値上がりしてから相続時の評価額で相続税を計算するよりも、相続税精算課税制度を利用した贈与のほうが有利になります。

②相続税が発生しないような贈与のときには、2,500万円以内の贈与であれば、無税で生前贈与が可能になります。

③財産の譲渡しを相続時の相続まで待たずに、生前に贈与することができるので、特定の財産を譲渡したい場合には、相続時のトラブルを心配することなく、相続と同じ感覚で財産を譲渡すことができます。

たとえば、不動産収入の発生するマンションがある場合には、相続時の相続でマンションを引き継ぐと、相続時までの不動産収入を使わずに預金で貯蓄している場合は、不動産収入も相続財産となり相続税がその分高くなりますが、生前贈与でマンションを引き継ぐのであれば、不動産収入は贈与された人の所得となり、相続財産評価額には影響しません。

(2)デメリット

①相続時精算課税制度の適用を一度受けてしまうと、その贈与者が亡くなり相続が発生するまでは、その贈与者については相続時精算課税制度が継続されますので、通常の贈与税の暦年課税制度に戻すことができません。

暦年課税制度では、毎年110万円の非課税枠があるので、毎年100万円程度の贈与を続けて、この積み重ねが2,500万円を超えるような場合は暦年課税制度のほうが有利となりますので、相続対策として生前贈与を考える場合には、どちらを選択するほうが得なのかを考える必要があります。

②財産が値下がりしたときには不利になります。

メリットの①で説明したのと反対に財産が値下がりしたときには、財産が値下がりした相続時の評価額で財産を評価したほうが有利になりますので、相続税精算課税制度を選択してしまった場合には不利になります。

③小規模宅地等の特例が適用できないので、小規模宅地等の特例が適用できる土地の場合は、相続時精算課税制度では土地の評価額が高くなり不利となります。

④不動産を贈与するときには、登録免許税や不動産取得税が発生しますが、相続の場合はこれらのコストがかからないので、これらの税金も考慮して相続時精算課税制度を選択したほうがよいのかどうかを検討する必要があります。

まとめ

相続対策として生前贈与を考えたときに、相続税精算課税制度を選択することは、条件をみたし必要書類をそろえれば適用を受けることができます。ただし、一度選択してしまうと、やっぱり通常の暦年課税制度のほうがよかったと思っても、元に戻すことはできません

相続税精算課税制度を利用するときには、まずは相続時の相続財産とその評価額をシュミュレーションし、生前贈与の方法として、暦年課税制度より相続税精算課税制度のほうがメリットがあり有利だということを確認するとよいのですが、相続のシュミュレーションは専門的な判断が必要です。

どちらの制度を利用してよいのかまよったときには、相続に強い信頼できる税理士に、専門家としてのアドバイスを聞くのも良い方法だと思います。

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