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自己株式(自社株式)の取得について

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自己株式(自社株式)の取得とは、株式会社が発行した株式を、その株式会社の株主から買い取ることをいいます。

自己株式の取得は、一度株主から調達した資金を株主に払い戻すことになります。株主にお金を払い戻すという点では、自己株式の取得は、株主への配当金を支払うことと同じです。

ここでは自己株式の取得に関するルールやその活用方法の基本を説明していきます。

自己株式(自社株式)とは?

自己株式とは、「株式会社が有する自己の株式」のことです。つまり、企業が発行した自己の株式について、発行後にその企業自身が自社株を取得し、保有している株式のことをいいます。

英語では Treasury stockや Treasury shareと言われることから、「金庫株」と呼ばれることもあります。

自己株式(自社株式)の取得について

平成13年の商法改正

過去より、経済界は自己株式の取得についての規制緩和を求めていましたが、平成13年の旧商法改正以前において、自己株式の取得は、原則として禁じられていました。

その理由として、資本金や資本準備金を財源として自己株式の取得が実施される場合、株主へ出資の払戻しが行われることと同様であり、債権者が不利益を受ける可能性があります。また、相場操作行為やインサイダー取引のおそれもあり、投資家が不利益を受けるおそれがあります。

しかし、自己株式の取得には、敵対的買収や従業員持株制度の整備等のメリットがあることから、一定の規制のもと平成13年の商法改正で、規制緩和されました。

現在はどのようなルールになっているか

現在では、自己株式の取得は、原則自由化となりました。前述の自己株式の取得の弊害に対しては、会社法155条に規定を置くことで、弊害を防ぐことになりました。

上場会社から中小同族会社まで、株主総会決議があれば全ての会社に自己株式の取得が認められています。さらに臨時株主総会での決議でも可能となったほか、当該決議により承認された取得の期間を1年以内で自由に定めることができるようになりました。

さらに、平成32年度末までの時限措置ではありますが、自己株式を対価とした事業買収に応じた株主について、株式の譲渡損益への課税の繰延措置が規定されました。売り手の負担となっている株式の売却益の課税を繰り延べすることで、売却意欲を高めM&Aの活発化を図ることが目的となっています。
さらに、買収手続も簡素化し、買収資金の流出が行われないため、手元資金が潤沢でない中小企業もM&Aがしやすくなるような措置となっています(自社株式を対価とした株式取得による事業再編の円滑化措置の創設)。

出典)経済産業省「平成30年度 経済産業関係 税制改正について

自己株式(自社株式)取得の効果

自己株式の取得の主なメリットとしては、株主から自社の株式を買い戻し、自社の持株比率を高め、より多くの議決権を保有することによって、敵対的買収を防止することができます。

また、自社の株式が市場で過少評価されているタイミングで、自己株式を取得することによって、市場に対して株価上昇のシグナルを発信することができます。

さらに、既存株主から自社の株式を買い戻すことになると、会計上、自己資本(純資産)、総資産の金額が減少します。仮に、自社の利益数値が同一であるならば、自己株式を取得した場合、ROA(Return On Asset:総資産利益率)やROE(Return on Equity:株主資本利益率、 自己資本利益率)といった収益性指標が改善します。

一方、デメリットとしては、自己株式の取得を行うためには、原則、株主総会決議を経なければならないため、実務上の手続が必要となります。

自己株式(自社株式)の取得手続きの流れ

現在、日本における自己株式の取得手続については、市場取引、公開買付け、相対取引の3種類の方法があります。

市場取引については、株式を上場しており、市場で流通しているのであれば、企業は市場から自己株式を買い取ることになります。

公開買付けは、株式市場で多数の自己株式を取得する場合、株価に影響を与えるため、金融商品取引法上で規定されている取得方法です。不特定かつ多数の者に対して取引所外で自己株式を取得します。

相対取引については、自己株式の取得にかかる決議によって、売り主となる株主が特定する方法であり、市場外で実施される方法です。
特に、非上場会社が、特定の株主からだけ自社株を買い取るような場合、他の株主からも同じように、自社株を買い取る機会を与えないと平等とはいえません。
そこで、会社法では、原則として自己株式を買い取るかどうかは、株主総会の特別決議で承認を得ることとしています。

なお、株式の譲渡を制限している非公開会社の株主は、自分の保有する株式を買い取るよう、会社に請求することができます。既存の株主は自由に株式を譲渡できないため、会社へ買い取りするよう請求することで既存株主の利益を保護しようとする趣旨です。

実際の活用方法

それでは、自己株式の取得について、実際の活用方法を見てみましょう。

①敵対的買収への対抗策

企業が敵対的買収に直面していた場合、市場や特定の株主から自己株式を取得することで、敵対的買収を防止することができます。

自己株式を取得することによって、自社の持株比率が高まることによって、自社の議決権比率を高め、買収をしかける企業の議決権比率を下げる狙いがあります。また、自己株式を取得することで、市場の株価は上昇するため、買収をしかける企業は、通常より高い価格で買収することになるので、買収するインセンティブが低下することもあります。

②合併・買収時の支払対価に利用

合併・買収等を行う場合の支払対価として、自己株式を交付することができます。新株発行と比較して、発行済株式数の増加による価値の希薄化や、将来の配当負担、新株発行コスト等の増加を防ぐことができます。

③ストック・オプション制度への活用

ストック・オプションとは、企業の役員や従業員が、あらかじめ定められた価額で、一定期間内に自社株式を購入できる権利を報酬として付与するものをいいます。取得した自己株式を役員や従業員に付与することで、上場した場合や株価が上昇した時点で売却することができます。

④株価低迷への対抗策

企業が、自社の株価が過少評価されていると判断した場合、自己株式を取得することによって、株価が実際よりも割安だというメッセージを市場に対し、発信することができます。また、自己株式を取得することで、市場に流通している株式数が減少することから、株価上昇を目的とする場合もあります。

まとめ

自己株式を取得に関するルール、手続、そして活用方法を説明してきました。

会社法上の取得手続を得なければならないものの、様々なメリットと活用方法があります。さらに、産業競争力強化法の改正を受け、平成32年度末までは自己株式を用いたM&Aの規制を緩和されていますので、自己株式の活用がますます増えるのではないでしょうか。

また、平成30年度の税制改正では事業承継税制」の要件が大幅に緩和されました。自己株式を用いたM&Aについて関心のある方は、こちらも合わせて確認しておくのはいかがでしょうか。承継のパターンや雇用確保要件、納税猶予となる対象の株式数や納税猶予額について大幅に要件が緩和されています。

※事業承継税制について詳しくはこちら → 平成30年度税制改正~事業承継税制の特例

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