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コラム

「特別受益」があるときの相続の注意点

2017.10.6
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近年、相続時におけるトラブルが増加傾向にあります。

相続とは死亡した被相続人の財産(遺産)を相続人が引継ぐことで、一般的には法定相続人である家族が相続します。被相続人遺言があるケースでは、遺言書の内容に沿って相続は実行されますが、それがない場合には話合いや法律によって、公平に分配されることが理想です。

しかし、中には生前に被相続人からの特別な利益(特別受益)を得ている相続人も含まれ、他の相続人との公平性が保たれなくなる事態が起きてしまいます。

相続トラブルの中でも相談が増加している「相続時の特別受益」とは、どのようなものなのでしょうか。

特別受益は相続時における不公平な状態のこと

人が死亡するとその遺産は、主に家族などの「相続人」が引継ぎます。死亡した被相続人の特別な意思が遺言書などで示されていない場合には、法定相続人が「話合いで分配」するか、「民法による法定相続割合で分配」するかを決めなくてはいけません。

しかし、分配時に問題になる内容として、被相続人が生前に一定の相続人へ行った「特別な援助」があります。

被相続人が死亡する2年前に子供の一人に住宅資金として500万円を援助していた場合、その子は予め500万円の遺産を受け取っていたと見なされます。

この援助のことを「特別受益」と呼び、これを死亡時の遺産(相続財産)に加え「みなし相続財産」を算出します。そして確定したみなし相続財産を相続人が公平に分配することが「特別受益の持戻し」であり、不公平な相続を回避する制度です。

特別受益の具体例を紹介

Aさんは妻B子と子供(C子、D男)の4人家族です。C子もD男も結婚して各々家庭を持っています。Aさんは長男のD男が3年前に住宅を取得する際に、援助として300万円を贈与していました。

Aさんが亡くなった時、Aさん名義の財産は合計で2,000万円あり、特に遺言書も見つからなかったことから、話合いにより法定相続に従って分配することにしました。しかし姉のC子は納得できません。「D男はお父さんから300万円貰っている…これでは不公平になる」と主張するC子は、専門家の意見を聞いたところD男は特別受益者に当たると教えてもらったのです。


D男の300万円を考慮しないで相続を行う場合では、法定相続として以下のような分配になります。

相続財産2,000万円

  • 妻B子:遺産の1/2 法定相続額1,000万円
  • 長女C子:遺産の1/2×1/2(1/4) 法定相続額500万円
  • 長男D男:遺産の1/2×1/2(1/4) 法定相続額500万円

しかし、長男は予め300万円の贈与を受けており、それが特別受益に当たることから、2,000万円の遺産に300万円を加えた額みなし相続財産にします。

相続財産2000万円+300万円 → みなし相続財産2,300万円

  • 妻B子:みなし相続財産の1/2 法定相続額1,150万円
  • 長女C子:みなし相続財産の1/2×1/2(1/4) 法定相続額575万円
  • 長男D男:みなし相続財産の1/2×1/2(1/4)-300万円 法定相続額275万円

この計算の通りまず遺産である2,000万円に長男が受けた300万円の特別受益分を加えて、みなし相続財産を算出します。そしてその額により各々の相続額を算出し、長男については300万円を既に受け取ったとして、差し引くことで残りの金額を算出します。


特別受益に対する理解は深まったでしょうか?引き続き、特別受益に該当するものは何かを改めて整理するとともに、いつ行われた贈与まで特別受益とみなされるのか、について確認をしていきましょう。

特別受益と見なされるケースとは?

特別受益 と見なされる贈与は大きく3種類があります。

  1. 遺贈
  2. 婚姻もしくは養子縁組のための贈与
  3. 生計の資本

遺言書に記載された財産を受け取ることを遺贈と呼びますが、遺贈特別受益 となります。また婚姻や養子縁組の際に受け取った「持参金」「準備金」も同様に特別受益に該当します。そして最も多いのが、「生計の資本」と呼ばれるもので、以下のような資金が特別受益として認められます。

生計の資本となる贈与とは?

  • 住宅資金の援助金
  • 土地の贈与
  • 大学、大学院進学費用
  • 事業を起こす際の資金援助
  • 親族間の扶養の範囲を超える金銭贈与
  • その他

この中で問題になるのは住宅建築時の援助が多く、金銭的な援助がなくても土地を譲られた場合は、土地の価格が特別受益になります。また兄弟の中で一人だけ大学へ進学した場合、大学卒業までにかかった費用が特別受益として計算されることもあります。

特別受益には時効があるのか?

特別受益被相続人が生前に行った贈与のことですが、いったい何年前まで遡って計算されるのでしょうか?

例えば30歳の頃に住宅資金として300万円の援助を受けて、それから30年後に父親が死亡したとしましょう。もう30年も前の贈与であり、住宅も築30年で価値も低下しています。30年前の話ですから、特別受益に該当しないと考えるかもしれません。

しかし特別受益には時効はありません。つまり被相続人が死亡する1年前であっても30年前であっても、特別受益に該当する贈与を受けていれば、みなし相続財産として取り扱わなくてはいけません。

ここで間違いやすいのが「相続税の生前贈与加算」です。

相続税の計算では「3年以内被相続人から贈与を受けた場合」には、相続財産として相続税の計算に含めなくてはいけません。つまり3年を超える以前の贈与は、相続税の計算に含める必要はありません。しかしそれはあくまで相続税の話であり、相続財産の分配である特別受益とは関係のない話だと理解して下さい。


それでは、特別受益がある場合の相続の手続きはどうなるのでしょうか?
特別受益がある場合の、相続手続きの流れを段階ごとに確認していきましょう。

特別受益がある場合の実際の手続きの流れ

特別受益共同相続人の不公平を是正する制度ですが、その手続きは簡単ではありません。

まず特別受益が認められる相続人に対して、特別受益の存在を主張することが必要になります。中には「昔、まとまったお金の援助を受けたから、その分の相続は遠慮するよ」と言う相続人もいますが、「そんな昔の話は関係ない」と知らぬ顔を決め込む人もいるでしょう。そこで実際に特別受益が認められる手続きを考えてみましょう。

1.まずは特別受益があった証拠を探す

一定の相続人に特別受益がある場合には、その証拠を探すことが重要です。

援助を行った時期には、被相続人預金残高にも変化があるはずです。特に被相続人の預金明細で、大きな引き出しや振り込みを確認することができれば十分な証拠になります。また不動産の登記情報や、証人を探して当時の状況を文章化することも効果的です。

2.話合いで遺産分割協議書を作成

共同相続人で話合いを行うことが大切です。

集めた資料から特別受益額を確定し、「特別受益の持戻し」を行います。持戻し特別受益を相続財産に加えた「みなし相続財産」から算出する相続額のことです。

みなし相続財産を元に各相続人の相続額を決めるのですが、あくまで話し合いなので、法定相続に従う必要はありません。各相続人が納得する方法で、相続額を決めることが重要です。

話合いがまとまると遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名捺印を行うことで作業は終了し、合意内容で相続財産が分配されます。

話合いがまとまらない場合は調停そして裁判へ

話合いでまとまればいのですが、中には強硬に特別受益を認めない相続人も出てきます。

そのようなケースでは家庭裁判所に遺産分割調停を申立てて、その中で特別受益を証明(主張)します。さらに調停がまとまらず不調になった場合には、そのまま裁判となり裁判所の判断を仰ぐことになります。

特別受益を含めた相続を行う際の注意ポイント

特別受益を含めた相続を行うためには、いくつかの注意ポイントがあります。

  • 特別受益の事実を主張しなくては認められない(自動的には認められない
  • 認めない場合のために特別受益一定の証拠を用意する必要がある
  • 持戻し免除に該当する場合特別受益とならない

この中で特に「持戻し免除」には留意する必要があります。

持戻しは特別受益による不公平を是正することですが、もし被相続人それを望まないと意思表示している場合には、持戻しを免除することができます。つまり特別受益がなかったものとして、相続が行われることになります。

持戻し免除の意思の表示には規定がなく、遺言に記載したり、あらかじめ相続人に意思表示したりすることで成立できます。また遺贈による特別受益遺言書によって、意思表示する方がよいでしょう。

特別受益は判断が難しく感情的になりやすい

例えば無職で生活に困っている子が親から援助を受けた場合、それを特別受益と言えるでしょうか?他の兄弟から見れば「親からお金を貰っている」と考えるかもしれませんが、これは生きる上で必要な扶養的な援助なので特別受益には当たりません。

このように「大人になってのお小遣い」と考えると特別受益ですが、「収入がない子供への扶養援助」であれば特別受益にはなりません。見方を変えるだけで判断が変わってくるのです。

このように特別受益の判断は難しく、相続人同士での話合いでは感情的になってまとまらないことが多いようです。そのような際には専門家に相談をして、妥当な判断を得るようにしましょう。

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