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コラム

相続トラブル回避のためにも押さえておきたい「遺留分」のポイント

2017.1.20
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相続する財産について、遺留分(いりゅうぶん)という言葉をご存じでしょうか。

遺言書などで相続の内容が、その相続人にとってあまりにも不利益だという場合に、最低限相続できる財産が法律で定められていて、これを遺留分といいます。

相続対策をする場合にも、遺産分割協議をする場合にも、遺留分について配慮する必要があります。今回は、遺留分についての基本的な考え方を解説いたします。

遺留分とは?

遺留分1

遺留分とは、法律で決められた要件をみたす相続人に、遺産の一定割合を相続することを保証するものです。

遺言書を作成することで、法定相続人以外の相続人に遺産を遺贈することもできますし、法定相続人の中の1人に遺産の大部分を相続させることもできます。しかし、たとえば、自分の愛人に全財産を遺贈するといった遺言があった場合、残された家族は生活に困ってしまう事態になりかねません。

そこで、法律で決められた要件をみたす相続人については、あまりに不利益な相続の内容であったときに、遺産を取り戻せる権利がみとめられるのです。

原則的には、遺言を残す人の意思が尊重されますので、遺留分請求しなければ取り戻すことができませんし、請求できる割合も法律で決まっています

遺留分を請求できる人・請求できる割合

遺留分を請求できる権利があるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。遺留分は、兄弟姉妹には認められず、妻や夫である配偶者、子供などの直系卑属、父母などの直系尊属に認められます。

遺留分は、直系尊属のみが相続人の場合は法定相続分の1/3、それ以外の場合は法定相続分の1/2が認められますので、相続する家族の構成によって、請求できる割合がかわってきます。

(1)妻または夫だけの場合

相続人が配偶者だけの場合は、配偶者の法定相続分は全遺産となりますので、全遺産の1/2が妻または夫の遺留分となります。

(2)妻または夫と子供2人の場合

法定相続分は、配偶者である妻が1/2、子供は残りの1/2をわけるので、それぞれ1/4となります。遺留分はその1/2となりますので、妻または夫が1/4、子供はそれぞれ1/8遺留分となります。

(3)妻または夫と父と母の場合

法定相続分は、配偶者である妻または夫が2/3、父と母は残りの1/3を2人でわけますので、それぞれ1/6となります。遺留分はその1/2となりますので、妻または夫が1/3、父と母はそれぞれ1/12遺留分となります。

(4)妻または夫と兄弟姉妹の場合

兄弟姉妹には遺留分は認められないので、配偶者である妻または夫に、(1)と同じように1/2遺留分が認められます。

(5)父と母のみの場合

父と母のみの場合は、全遺産を父と母でわけますので、それぞれ1/2法定相続分となります。この場合に認められる遺留分1/3ですので、父と母はそれぞれ1/6遺留分となります。

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ここまで遺留分の基本を押さえてきました。

 

法律で決められた要件をみたす相続人に、遺産の一定割合を相続することを保証する「遺留分(いりゅうぶん)」。

しかしながら「遺言の内容が不平等」、「相続財産の内容が不透明」といった理由から遺留分をめぐるトラブルに繋がることが多い、と言われています。

ここからは「遺留分の侵害」が発生していた場合の対応方法について、解説していきます。

遺留分が侵害された場合

遺留分減殺請求

遺留分の侵害、というと難しい言葉になりますが、わかりやすくいうと、法律で認められた最低限の相続できる遺産があるはずなのに、遺言書などで別の人に遺産が渡ってしまい、自分が不利益な状態になっていることをいいます。

遺言書があっても、前回記事「遺留分を請求できる人・請求できる割合」で説明した各相続人に認められている遺留分については、相続できる権利があります。したがって、自分の遺留分の範囲内で、遺贈や贈与の効力を減らしたり、なくすように請求をすることができます。この請求を「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」といいます。

(1)遺留分減殺請求の方法

ここで一番気をつけなければならないことは、遺留分が侵害されている場合にも原則的には遺言があれば遺言が尊重されますので、遺留分の侵害をされている人が、遺留分の減殺請求をしなければ、その侵害されている部分の遺産を相続できないということです。

遺留分減殺請求の方法には特別に決まっている方法はありませんので、遺留分を侵害している人に対して直接交渉することもできますし、裁判所で争うこともできます。相手が内容証明郵便を無視をする、遺留分の減殺請求に応じない、といったケースでは遺留分減殺請求調停を家庭裁判所へ申し立てることになります。

遺留分減殺請求をされた人は、遺産のうち遺留分を侵害している部分について返還する義務が生じます。

(2)遺留分が認められる期限

遺留分が侵害されているときに、もうひとつ気をつけなければならないことは、遺留分減殺請求権の期限です。

まず、遺留分減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間で消滅します。これを「時効による消滅」と言います。

被相続人が亡くなって贈与や遺贈があり、自分の遺留分が侵害されて遺留分減殺請求ができると知った時からとなりますが、遺留分減殺請求を実際にするには、被相続人が亡くなってから1年と考えておくことが、より確実です。

また、相続開始から10年が経過してしまうと、たとえ遺留分が侵害されているということを知らなくても遺留分減殺請求権は消滅してしまいます。このことを「除斥期間(じょせききかん)による消滅」と言います。

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以上、「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」について解説しました。

実際の相続の現場で「遺留分を自ら放棄することができるのか」ということが問題となることがあります。ここからは遺留分の放棄について解説していきます。

遺留分の放棄

遺留分の放棄

遺留分の放棄については、「相続開始前」なのか「相続開始後」なのかの別に分けて考える必要があります。

(1)相続開始前の遺留分放棄

実は、原則として遺留分については放棄ができないことになっています。

遺留分の放棄を自由にできる、ということを認めてしまうと、たとえば、愛人に全財産を残したいと考えている人が、遺留分のある人に対して遺留分を放棄するように強要して、遺言を残しておく、というような事態が発生し、法律で遺留分を保証した意味がなくなってしまうからです。

ただし、どうしても本人の意思遺留分を放棄したい場合には、家庭裁判所に申し立て許可を受けることにより、放棄をすることもできます

家庭裁判所には「遺留分放棄許可審判申立書」を提出して、許可を得ることが必要です。家庭裁判所は、放棄者本人に出頭を求め、放棄の理由などについての質問をします。その理由が妥当と判断されれば、遺留分放棄の審判がくだります。なおこの審判に異議申し立てはできません。

また遺留分を放棄したとしても、相続自体を放棄したわけではありませんので相続をすることはできます。あくまで遺留分を侵害された場合の、遺留分減殺請求権がなくなるだけです。

(2)相続開始後の遺留分放棄

相続開始後、つまり被相続人が亡くなった後は、被相続人遺留分を放棄するように強要するということもありませんので、遺留分の減殺請求をする権利のある人は、家庭裁判所の許可を得ることなく、自由に権利を放棄することができます。

遺留分の侵害をされている場合に、遺留分の侵害をしている人に対して、自分の遺留分の権利は放棄すると伝えればよいのですが、前回の記事で説明したように、遺留分減殺請求権には消滅時効がありますので、なにもしなくても1年で権利は消滅することになります。

遺留分についてのまとめ

遺留分について基本的な考え方を解説しましたが、遺留分が侵害されるような遺言書があると、あとから遺留分減殺請求をするといった手続きをしなければならなくなります。

できれば事前に、遺留分に気をつけて遺言書を作成するようにしましょう。また、遺産分割協議をするときにも、遺留分に配慮する必要があります。

相続では、普段は仲のよい家族でも争いになってしまうケースが多くあり、争いになるケースの中でも多いのが遺留分を侵害するような遺言書がある場合です。

出来れば事前に、なるべく争いのないように遺留分にも気をつけて相続対策をしたいものです。相続対策には、さまざまなケースに対応できるように、信頼できる相続に強い税理士などの専門家に相談することをおすすめいたします。

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