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コラム

他の相続人への贈与の状況を知りたい!

2017.6.12
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相続対策をしようと思ったとき、自分の財産を他の相続人に相続させるといった場合には、自分の財産やその財産の生前贈与の状況について把握できることが多いでしょう。しかし、相続する方が相続対策を行うときには、これらはなかなか把握できません。相続財産がどのように他の相続人へ贈与されているのかの状況がわからないことには、贈与の状況によって相続税も変わってきますので、他の相続人への贈与の状況を知る必要があるときがあります。

このようなときには、「贈与税の申告内容の開示請求」という手続きで、他の相続人への贈与の状況を知ることができます。

どのようなときに他の相続人への贈与の状況を把握する必要があるのか?

相続税を計算しようと思った場合、相続財産についてしっかりと把握しなければなりません。生前贈与が行われている場合には、相続税の計算に関係する財産に生前贈与が関係してくるときがあります。

相続財産の持ち主である相続させる側(被相続人)が、どれだけの相続財産があり、どれだけの生前贈与を行ったのかを把握していれば問題はないのですが、相続する側が相続対策を行おうと思っていて本人が高齢でうまくコミュニュケーションがとれない場合、本人が忘れてしまっている場合、突然相続が発生した場合、他の相続人とのコミュニュケーションがとり難い場合など、他の相続人への贈与の状況がすぐにわからないときがあります。

特に気をつけなければならないのは、次のような贈与が発生している場合です。

(1)3年以内にされた贈与

被相続人亡くなる前の3年以内にもらった財産は、相続税がかかります。亡くなる日の前から3年以内にもらった財産は、亡くなった日には被相続人の財産ではなく、贈与を受けた人の財産です。相続税を安くするために被相続人の体の具体が悪くなってからいそいで生前贈与を行うことを防ぐために、このような決まりができました。

せっかく贈与税の基礎控除額以下で生前贈与をしたとしても、死亡前3年以内の贈与は、贈与を受けた財産の贈与のときの価額に相続税がかかってしまいます。

このことから、相続税対策は相続人の体の具合が悪くなってからではなく、なるべく早いうちから計画的に行っていくことが大切だということがわかりますね。

(2)相続時精算課税

相続時精算課税制度とは、親から子への贈与をスムーズにして、消費をたくさんする子の世代の消費を増やそうという目的で創設された制度です。この制度は、親の年齢、子の年齢など一定の要件をみたさなくては利用することができません。

利用できる要件にあてはまっている場合には、相続時精算課税制度を利用することで、生前に2,500万円までの相続財産について前渡ししても税金がかからないという制度です。この制度を利用して贈与された財産については、相続が発生したときに精算して相続税の計算をします。

相続時精算課税制度は、闇雲に利用すればよいわけではなく、この制度を利用したほうが得な場合と、1年ごとに基礎控除額を使うことのできる暦年課税制度を利用したほうが得な場合があります。一度、相続時精算課税制度を利用すると、その後の贈与はずっと相続時精算課税制度によらなければならないため、暦年課税制度に戻すことはできません。また、小規模宅地の特例が受けられないなど気を付けなければならない点がいくつかあります。

相続時精算課税制度を利用する場合にも、長期的な視点にたって計画的に行っていくことが大切になってきます。

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相続税の申告を正確に行うには、贈与の状況を把握することが大切であることを解説しました。特に被相続人が亡くなる前、3年以内になされた贈与や相続税精算課税制度を利用していた場合は気を付けなければいけません。

贈与の状況を把握するには「贈与税の申告内容の開示請求」という手続きを行うと、他の相続人への贈与の状況も把握することができます。具体的な手続きについて見ていきましょう。

贈与税の申告内容の開示請求手続き

(1)贈与税の申告内容の開示請求手続きとは

相続税の申告や、一度した相続税の申告について更正の請求をしようとする場合に、他の相続人が相続発生前3年以内に受けた贈与相続時精算課税が適用される贈与についての課税価格の合計額について開示を請求する制度です。

この手続きを行うことで、相続に関係する生前に行われた贈与に必要な情報を知ることができます。

(2)手続きができる人

この開示請求を行うことのできる人は、相続税の申告や、一度した相続税の申告について更正の請求をしようとする人だけで、他の人は贈与税の状況についての開示請求を行うことはできません。

(3)請求ができる期間

この開示請求は、被相続人死亡した年の3月16日以後に請求することができます。

(4)必要な書類

贈与税の申告内容の開示請求をするには、開示請求書を提出しなければなりません。開示請求書(PDFのリンクが開きます)は国税庁のホームページでダウンロードできます。

※国税庁ホームページ 「相続税法第 49 条 第 1項の規定に基づく開示請求書

(5)添付書類

必要な添付書類は、次のような場合で変わってきます。

①全部分割の場合

全部分割」とは、遺産のすべてについて一度に分割を行うことです。この場合、遺産分割協議書の写しが必要になります。

②遺言書がある場合

贈与税の申告内容の開示を請求する人と開示の対象になる人についての、遺言書の写しが必要になります。

③上記(①、②)以外の場合

贈与税の申告内容の開示を請求する人と開示の対象になる人についての、戸籍の謄(抄)本が必要になります。

※贈与税の申告内容の開示を送付によって受け取りたい場合

送付を希望する場合には、開示を請求する人の住民票の写しと、返信用の封筒に切手を貼ったものが必要になります。

(6)本人確認に必要なもの、マイナンバーについて

開示を請求する人には、本人確認書類が必要になります。免許証、健康保険証など本人確認ができるものを用意しておきましょう。マイナンバーの記載も必要になりますので、個人番号カードか通知カードの用意も必要です。

まとめ

贈与税の申告内容の開示請求があるので、本人がどれだけの贈与をしたのか忘れてしまっている場合や突然相続が発生した場合にも、相続税の計算をするための情報は手に入れることができます。

しかし相続を考える時に大切なことは、長期的な視点にたって計画的に対策をしていくことです。

生前贈与を行っているということは、少なからず相続対策を考えて贈与を行っているのではないでしょうか。せっかく生前贈与を行っていたとしても、相続発生前3年以内のものは相続税がかかってしまいますし、相続時精算課税も利用したほうがいい場合とそうでない場合があります。誰にどれだけの生前贈与を、どのような方法で行っていくかは、相続人の意向、相続財産の状況、相続発生までに予想される期間などを総合的に考えて行っていく必要があります。特定の相続人ばかりに生前贈与を行ったために、相続発生後に相続人同士のトラブルになってしまったというケースもあります。

相続対策は相続税が関係してくるだけではなく、デリケートな問題でもあります。相続に関係する法律や税金にくわしく、さまざまな相続のケースを取扱い、依頼者に親身になって相談にのってくれる信頼できる税理士に相談することがおすすめです。相続に強い税理士であれば、相続についてのトラブルを予想することもできますので、慎重に対策をするためのアドバイスをすることもできます。

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